両国駅から徒歩10分程度の築42 年(ギリギリ新耐震)のマンション住戸を改修する計画です。
元々の間取りは、1980 年代のマンションによく⾒られる全体的に縦⻑の箱に「⽥の字」型のプラン。58 ㎡という平均的な広さに加えて、間⼝が狭く、細⻑いプランで両隣に住⼾を抱える−ありふれた住⼾形態−に対して、光や⾵、影や声など、外の気配を感じることができる“気配の通り道″を計画することで、都市との接点を持ち、感覚的に“広い″と感じられるような、空間性を獲得することを⽬標としました。
操作⾃体はシンプルで、間⼝が狭く細⻑いことを逆⼿に取り、リビングとダイニング、書斎を雁⾏するように配置し、共⽤廊下とバルコニーに⾯する開⼝部を斜めに繋ぐことで、どこにいても“外の気配″を感じることができるような計画としています。
広いワンルーム空間とは異なり、雁⾏する空間配置とすることで、リビングの隣には寝室を、ダイニングの隣にはキッチンや収納を、と住機能として必要な機能が隣接する計画を可能とし、それらの空間に対して、透明性の⾼い建具や腰壁、カーテンを⽤いて空間の接続と切断を意識的に⾏うことで、家族と繋がりつつも、たまには1 ⼈になれるような、そんな計画としています。
友⼈や家族が来た時には皆で集えたり、1 ⼈になりたい時は視線の抜けを遮り、囲われた空間に居られたりと、機能に縛られない現代の暮らし⽅にフレキシブルに対応でき、程よい距離感を持ちつつ“感覚的に広い″と感じることができる暮らし⽅を獲得する。また、細⻑いプラン形状がゆえに、どうしても⻑くなってしまう廊下に⾯するように洗⾯台を計画することで、動線に機能を与え、空間を有効活⽤しました。
既存の梁は、今回のプランニングとは切り離して考えることで、既存プランの記憶を引き継ぎつつ、計画プランとの不整合が余剰空間として⽣まれる⾯⽩さを持たせました。梁をあらわしにして残したことで、⻑⼿⽅向に対して視線の抜けを助⻑する役割も果たしています。
設計:酒井 健太郎 /SAK.
面積:約58㎡
期間:2024/6~8(設計)
2024/9~12(施工)
施工:折小野 岳人 / todo
写真:中村 晃